地図でフランスを探せば、ヨーロッパ西部のあの六角形の国が出てくる。隣国といえばスペイン、ドイツ、イタリア——誰もがそう答えるだろう。しかし「国境線が最も長い隣国」を問われると、答えは意外にもブラジルになる。ヨーロッパから1万キロ離れた南アメリカに、フランスの「一部」が存在しているからだ。
フランス領ギアナ(Guyane française)は、南アメリカ大陸の北東部に位置するフランスの海外県だ。「海外領土」や「植民地」ではなく、本土のノルマンディーやプロヴァンスと並ぶフランス共和国の一部として法律上も扱われる。住民はフランス国籍を持ち、ヨーロッパ議会の選挙にも投票できる。
面積は約83,500 km²で、日本の本州の約4割に相当する。人口は約30万人。北は大西洋に面し、東と南はブラジルと、西はスリナムと接している。
フランス領ギアナには世界的に有名な宇宙基地「ギアナ宇宙センター(CSG)」がある。赤道に近い低緯度という地理的条件が打ち上げに有利なため、ESA(欧州宇宙機関)の主要な発射拠点として機能している。
フランス領ギアナとブラジルの国境線は、アマゾンの密林の中をおよそ730kmにわたって走っている。一方、ヨーロッパ本土でフランスとスペインを隔てるピレネー山脈の国境線は約623km。数字を並べると、南米の方が100km以上長い。
フランス(本土)× スペイン
フランス(本土)× イタリア
フランス(本土)× ドイツ
フランス領ギアナ × ブラジル
約 623 km
約 488 km
約 448 km
約 730 km ← 最長
こうして並べると、フランスの「最大の隣国」がブラジルである事実がはっきりする。EUの外に位置するにもかかわらず、フランス共和国として国境を共有しているのだ。
さらに面白いことに、フランス領ギアナはEU(欧州連合)の構成領域に含まれている。つまりEUとブラジルは陸続きで直接国境を接しているということになる。ヨーロッパの組織が南アメリカのアマゾンに国境を持つ——地図を頭の中で想像し直さないとなかなか受け入れがたい事実だ。
この国境地帯には橋も架かっており、フランス領ギアナ側のサン=ジョルジュとブラジル側のオイアポクの間を結ぶ「オイアポク橋」が2017年に正式開通した。アマゾンの奥地で、EU加盟国とブラジルを結ぶ橋が静かに存在している。
フランスの隣国がブラジルというのは、厳密には「フランス領ギアナの隣国」という話だ。しかしフランス領ギアナはフランスの一部であり、ブラジルはれっきとしたフランスの隣国である。世界地図を眺めるとき、国の「輪郭」は私たちが思うより複雑な形をしていることがある。