「サンドボックス(Sandbox)」とは、子供が遊ぶ砂場のこと。山を作ってもトンネルを掘っても、お城を建ててもいい。誰も「こう遊べ」とは言わない。ゲームのジャンルとしてのサンドボックスは、その砂場の自由さをそのままゲームに持ち込んだ設計思想だ。
英語の "sandbox" は文字通り「砂(sand)の箱(box)」。幼い子供が砂遊びをするための浅い箱型の遊具で、日本でいう公園の砂場に近いものだ。
この言葉がゲームの世界に持ち込まれたのは、砂場と同じ性質を備えたゲームを表現するためだった。砂場では「何をしてはいけない」というルールはほとんどなく、子供は自分で遊びを発明する。それと同じように、プレイヤーに圧倒的な自由を与えるゲームジャンルを「サンドボックス型」と呼ぶようになった。
従来のゲームには、ほぼ必ずクリア条件が存在する。ボスを倒す、ゴールまで走る、スコアを規定値まで上げる——ゲームがプレイヤーに「これを達成せよ」と目標を押しつける構造だ。
サンドボックスゲームはこの構造を意図的に取り払う。ゲームは「世界」だけを用意して、「何をするか」はプレイヤーに委ねる。建築に没頭してもいい。探検し続けてもいい。ただぼんやりと眺めて終わってもいい。目的を自分で作れることが、このジャンル最大の特徴だ。
ゲーム設計の文脈では「目標がない」ではなく「目標が外部から課されない」と表現するほうが正確だ。プレイヤーは必ず何かを自分でやりたくなり、そこに自発的な目標が生まれる。
このジャンルを世界的に知らしめたのが、2009年に公開された『Minecraft(マインクラフト)』だ。ブロックで構成された無限のワールドに放り込まれるが、チュートリアルはなく、エンディングもなく、「何をしろ」という指示もない。最初の夜に迫ってくるモンスターから身を守るため、プレイヤーはほぼ本能的に木を殴り、道具を作り、家を建て始める。
Minecraftの成功は、「ゲームにはクリアが必要だ」という前提を根底から覆した。現在では世界で最も売れたゲームソフトとして記録されており、プレイヤー数は3億人を超えている。